―ユージェニクス―

「一つ違いでも重要なのこの歳だったら!中学なら咲眞、先輩じゃない!」

「てかもう高校だよ僕。まぁ先輩への態度がなってない後輩は嫌だけどね」

「でしょ!」

「でも今更だよ茉梨亜」

「……よね」

それで一端落ち着いて。


「って高校!!?」

「年齢的にはね、でも行ってない」

「え」

「だから中卒止まりだねぇ」

「……て事は咲眞、去年とかスラム(ここ)来ながら中学通ってたの?」

「そうだよ?」

「(うわ、朝から咲眞があたし達と居た時は日曜とかだったんだ…)」

スラムの生活に曜日は関係ないので、平日だの休日だのという概念が薄い。

ついでに言えば民間保護地区の子供にも義務教育は適応される。
故に学校へ通わなければならないのだが、そんな真面目な子供はまずいない。

れっきとした住所も貯蓄も無い子供が学校に通う筈はなく、事実上は不登校というわけである。

これが問題視されていない事もないが、政府や教育委員会の手は未だ伸び切っていない。

現時点で虐めや生徒同士のいさかい自殺、教師のセクハラ教科書問題諸々で委員会は火の車、身元が不明瞭な子供達の配慮に手が行き届く筈もなかった。


……ともあれ咲眞が中卒な疑問を、茉梨亜は尋ねる。

「なんで高校行かなかったの?」


「……勉強に意味があるのかなって、思って」


世の教育ママが卒倒しそうな言葉をサラリと吐いて、咲眞は茉梨亜に向き直る。


「話を戻すけど」

「あ、うん」

一瞬どこまで戻るんだろうと茉梨亜は頭の中を駆け巡らせた。


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