―ユージェニクス―
気合いの入った茉梨亜を見ながら、咲眞は苦笑する。

「……茉梨亜、本当に拜早の事好きだねぇ」


「何言ってるの、愚問よ咲眞!」

…そんな単語どこで知ったのか。


「拜早だからってわけじゃないわ!もし連れてかれたのが咲眞でも、あたしは研究所に突入するわよ!」


……それには思わず固まった。

「……え」

拜早が行ってしまって茉梨亜が騒ぐのは、拜早が好きだからでは……


「そう、なの?」

「そうなの!べつにあたしが拜早好きだからとかっそ、そんなんじゃないんだから!」


また赤面して茉梨亜はプイとそっぽを向く。


……茉梨亜の言ってる事は本当だろう。

拜早を好きなのは知っている。

だが惚れた腫れた関係なく、こうなれば茉梨亜は咲眞でも拜早でも連れ戻しに行くだろう。


自分達がそうするように。



「……はは」

「な、何かおかしい?」

「いや……」

裏表のない子だから、そのままの言葉を信用出来た。


「茉梨亜を好きになって良かったなと思って」

微笑んで少し真面目に茉梨亜を見つめる。


茉梨亜は目をしばたたいていた。


「咲眞……」

「何?」


「……ごめんなさい」

「うん、知ってる」

と笑って軽口に返したものの、ぺこりと頭を下げられたのが内心意外だった。

茉梨亜が真面目に答えたのは初めてだ。

以前は咲眞が告白をほのめかしても、明るくはぐらかしてばかりだったのだが。

まぁ咲眞も真面目に言っていなかったのもあるが……


「茉梨亜、どうしたの?」

「へ?」

「なんか変」

半笑いで咲眞は椅子に座り直す。

「何それー!」

むぅ、とした顔付きになった。
茉梨亜は今も確かに茉梨亜だが、何かが変わったと思う。

酷く悩む、という事を経験したからだろうか。


そして茉梨亜は渋い顔を振り払い、もう一度咲眞と見合わせた。


「でっ!これからどうする?早速研究所にどーんと殴り込む!?」


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