―ユージェニクス―
茉梨亜は秋吉に対して同じくきょとんとした顔で返した。

「エスティーアイ?」


「うん。でもオレもよく分からないなぁ」



研究所の意向が気になって、茉梨亜は片っ端からスラムの住民に聞き込みをしていた。

大概「知らない」「覚えてない」などと淡泊な解答であったが、偶然鉢合わせした秋吉に問い掛けてみればそんな単語が返ってきたのだ。


「それも医療研究の一部って感じなのかな」

「だと思うよ。研究所のホームページとか調べてみたら解るかもしれないね。まぁここには回線がないけど……」


……やはり全体的に住民達の範疇では研究内の認識が薄い。

これなら研究所も黙ってスラムの住民を使い、やりたい放題やっても……例えば白の怪物と研究所に繋がりがあるなどとは民間人は微塵も思わないわけだ。


「ホームページかぁ…」

実はそれなら既に咲眞が城で手を打っていた。
だが空振りだったらしい。

『まぁ研究段階の中身を不特定多数の人が見られるネットに公開はしないよね』

というのが、ページを一読した咲眞の見解だったのだが……

ここにある研究所についての記載があるページは、確かに存在した。

だが分かった事は、小難しい大学院がスポンサーに付いている事と、なんらかの複雑染みた医療研究をしている……その二つだけだった。

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