―ユージェニクス―
「STIと医療研究……拜早はそれに関わってるのね……」

では、白の怪物はどういった理屈で生まれたのか。


それに。


「黒川は研究所に拜早と咲眞を売ったから……つまり、黒川も研究所と繋がってる……研究に協力してるって事?」

あんな奴が研究協力?

まさか。

それはない。

自分の欲の為にしか動いていなかった男だ。

……裏を返せば、見返りがあれば協力する男という事になるが。

「ちょっと待って!」

「ま、茉梨亜ちゃん?」


研究所が医療研究をしているのならば、拜早や咲眞は……?


「まさか二人ってばサンプルとして病原菌を身体に入れられたりして!?」

「茉梨亜ちゃん、何ブツブツ言ってるの?」

秋吉が傍にいる事を完全に忘れ自分の中に入っていた茉梨亜。

流石に秋吉は不審気な顔をしている。


「あ、そういえば茉梨亜ちゃん、記憶喪失大丈夫?」

「え?記憶喪失??」

覚えのない単語に疑問符を浮かべる。


「前拜早くんが言ってたよ、茉梨亜ちゃん転んで頭ぶつけて暫く記憶喪失になったって……その頃の茉梨亜ちゃんともオレ会ってるし」

「は、はぁ」

「確かにこの前のあの茉梨亜ちゃんなんかおかしかったし……」


秋吉は変な事を言う。
自分は最近黒川邸にいたのだから勿論秋吉には会っていない。


「なーに言ってんの秋吉さん!あたし秋吉さんとものっすごく久々に会ったじゃなーい!」

「へ?」

「あっあたしそろそろ行かなきゃ!じゃあまたねー!」


そうして颯爽と駆けていく茉梨亜の後ろ姿を見ながら、秋吉はやはり首を傾げた。

「ま、茉梨亜ちゃん……また記憶喪失なんじゃ……」



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