―ユージェニクス―
「……咲眞、本当にやるの?」
その問いは何に掛かっていたのか……
「……いざとなれば、やるよ」
咲眞は並べてあったスタンガンに触れた。
「研究所のやってる事が異常なのは間違いない。僕達に味方してくれるのは、その事実だけだから……」
だから
「最終手段は『これ』で脅す」
苦肉の策の様に微笑んだ。
「……咲眞、あたし…………」
何かを言いかけて、しかしそのまま口を紡ぐ少女。
咲眞はゆっくりと茉梨亜を見る。
「どうしたの?」
「なんでもない」
急に小さくなって膝を抱えた少女を、くすりと笑う。
「なんだ、これが終わったら拜早にちゃんと告白するのかと思った」
「えっ?」
茉梨亜は勢いよく顔を上げ、それを一瞥して咲眞がまた笑った。
「……ッ」
微かに赤く染まった頬を伏せながら口を開く。
「……咲眞はなんでもお見通しなのね」
「そんな事ないよ。何でそれを僕に言おうとしたのか分からないし」
「……なんとなく、咲眞には言っておきたくて」
「……そう」
少年の表情は穏やかだった。
「ならますます頑張らないとね」
「う……うん」
「拜早と会って三年目だっけ?」
こくりと頷く。
「初めから仲良かった?」
今まで茉梨亜と拜早の出会いを聞いた事はない。
興味がなかったわけではないが、過去を聞けば茉梨亜の事が好きだった自分が心苦しいのでは……と、どこかで思っていたから……