―ユージェニクス―
「はい」
塔藤が答える。
「ならそれの通りに従って貰う。管原、おまえもだ」
「わざわざそれだけを言う為にここまで?ご苦労様だな」
「記録分析班は勝手な行動が多いからな。特に黒川邸の時の様な身勝手さは……」
「あれは塔藤は関係無い。班で一括りにしないでくれ」
「……管原」
塔藤が目線で管原を見上げた。
鼻で笑う様に盟代は続ける。
「……なんにせよそのせいで管原、おまえは幹部候補から格下げだ。くだらん行動は慎め」
「そりゃどーも」
厳しく言い放ち、盟代は踵を返す。
振り向く事もないまま二人の前を後にした。
「アイツまじこれだけを言う為に来たのかよ。もしかして暇なんじゃねーか上層部」
「管原って幹部候補駄目になったんだ。まぁあれだけ色々好き勝手にしてたらねぇ……」
意外そうなニュアンスを含みながらも、塔藤は苦笑している。
それを見た管原はあからさまに肩を竦めてみせた。
「ああ、研究もレポートも完璧だったんだがな」
「行動がね」
笑う。
班長兼、課の主任である塔藤より管原が幹部候補に上がっていたのは、それぞれの行いと希望する目標、肌に合う立場というものが弾き出した結果になるが……
「さて塔藤サンよ。おまえ俺に話があったんじゃないのか?」
「あ、うん……」
なんの為にここへ来たのかが曖昧になりかけていた事を引っ張り出す。
が、塔藤ははにかんだ笑いをしただけだった。
「やっぱいいや」
「あ?」
「管原の意見は聞けたし……俺は様子を見る事にするよ」
微妙に気の抜けた様な口調である。
「放っといても侵入者は誰かが捕まえるでしょ。可哀相だけど……」
そんな塔藤を、管原はじっと見下ろした。
「……塔藤。警備室に連絡したのはおまえだろ?」
「!」
ぴくりと目を見開く。
管原の声色は低かった。