―ユージェニクス―
「予防摂取?」

「……色々ありますが、恐らく関係するのはここ近年で義務付けられたものでしょうね」

模索しながら折笠が口を開く。

「ここ数年で一般の方達……ここの言い方ですと外界者、ですか?……それらに対し受ける様義務付けられたのは、慢性インフルエンザの予防摂取ですが」

咲眞は折笠を見上げる。

「……15で受けさせられるやつ?」

「ええ、15歳以上の人はほぼ全員……ですか例によって保護地区には行き届いていない」

軽く握った指先を口元に当てて咲眞が続けた。

「……確かに僕も姉さんに言われて受けた。それがここと関係あるの…?」

咲眞の疑問に補足したのはシティリアート。

「何かの作用があって駄目なんだって。だから予防摂取を受けてない人が対象らしいよ」

「抗体の問題でしょうね。しかし……」


「番号が合わない……」

ぽつりと咲眞は口を衝く。

「僕らは400番代だったはず。拜早の様な人は100人って、さっきシアは言ったよね」

「うん、だから1番から350番辺りがSTIので、咲眞までの人達がユ……」

とシティリアートが続きを告げかけたと同時に、大きく部屋の扉が開かれた。

「何をしている!!」

現れたのは白衣を羽織ったスーツの男。その後ろには警備員も一人ついている。

咲眞はじめシティリアートも折笠も流石に驚きを表した。

「おい、何をしているのかと聞いているんだ!」

再び怒鳴られ、折笠は気付いた様に天井を見上げる。

(監視カメラか)

被験者の部屋で他所の人間が集まって居たのが不審に思われたのだろう。

(ここの警備員はきちんと仕事をしているみたいだな……ま、当たり前だけど)

折笠は監視カメラを見据えたまま少し目を細めた。


「君達は……あれだ、建築物調査のアレだろう!だがここは被験者の個人室だぞ!調査対象外のはずだが!?」

「あ、あの、この人達は……」

シティリアートは弁解しようと戸惑いながら咲眞を見上げる。
だが言い訳が思い付かない。
それはそうだろう、自分達が白衣でも纏っていたならばまだ口八丁で言い逃れ出来たかもしれないが……

「ん?白衣…?」

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