―ユージェニクス―
「なっ何……!?」
突如鳴り響き出した非常ベルの金物音に茉梨亜は頬を引き攣らせた。
この階で鳴っているわけではなさそうだが……
「もーっなんなのよぉ〜〜〜」
パタパタと廊下を走る。と、角を曲がった瞬間沢山の研究員が飛び出してきた。
「ゲッ!」
たじろいだ茉梨亜だったが、研究員は皆他の事に気を取られている様で茉梨亜の事など見向きもしない。
「しっかしなんだこのベル!」
「侵入者だろ!?」
「そんなわけあるか、どうせ誤報だって」
口々にそんな事を言っている。
「仕事溜まってるのに変なハプニング止めてほしいよな〜」
「あ、おまえさっきの資料持ってる?」
(とにかくこの階から離れなきゃ……でも〜)
相変わらず迷子である。
「イグジットさん(非常口看板)探して階段使った方が早かったりして……」
「“5階から出られな〜〜〜い(T□T)”……って、茉梨亜……何してんの」
メールを読み終えた咲眞は半目で毒づく。
「まぁ合流したいから調度いいんだけどね……」
「着きましたよ」
エレベーターの扉が開き、5階のフロアが広がった。
ここでも少し非常ベルが響いていたが、誰かが復旧させたのか二人が5階に足を踏み入れたと同時に音が停止する。
「はぁ……とりあえず茉梨亜回収だね……ん?」
横を見やると、警備員が慌ただしく行き来していた。
「警備本部から連絡!当階Aフロアで不審人物目撃!監視カメラの映像反映との事です!」
やり取りが嫌が応にも耳に入った。
「ちょ……ちょっと……」
「あれ、今の不審人物ってたぶん茉梨亜さんの事ですよね」
咲眞は青くなり、折笠は我関せずな身分をいい事に淡々としている。
咲眞は凄い早さで携帯を取り出し見えない速さで二、三プッシュして耳に当てる。
「茉梨亜!今どこ!……5階のどこ!Aフロア!?まだAフロア!?移動出来ないの!?」
「同じ所をグルグルってパターンですかね」
「同じ所グルグル!?そんな森の中じゃないんだから……とにかく今行くからちゃんと研究員っぽくしてて」
そして脱力と共に電話を切った。
「大変ですね」
「……」