―ユージェニクス―
「ちょっと……ちょっと咲眞」

「だって自分の事ボクって言ってたし、出るとこ出てないし」

発育途上なのかもともと発育しないのか。

「セクハラ!!」

軽く思案したら凄い顔で怒られた。
あとセクハラは死語である。

「女の子と思うわよ。でも女の子として生きてないんだわ」

「……?」

「女だから身体を武器にするかもしれないけど、自分が女だと思っていたら負けそうになるもの」


茉梨亜と目を合わせていた自分は、きっと何とも言えない顔をしていただろう。

「……女子って事を武器にするのに、身体をいたわらないって事?」

「そんな感じ。あからさまにカラダ大切にしてたら男の恰好の餌食でしょ」

茉梨亜の言葉は的を得ていた。
女を出せば狙われるのはスラムの道理で、そのスラムの中心に建つ施設が性感症の研究とはなんとも皮肉だが。

シアと初めて出会った時の事を思い出した。

「でも……もし女の子なら」

呟いて、茉梨亜を見る。


「勿体ないよね」

「へ?何が?」

「……なんでもない」

着飾れない事とか無理して平気な顔するとか。
……弱いところを見せれば気付いて守ってあげられるのに。

――そう思うのは外界者故の甘さなのだろうけど。

保護地区に住んでいる以上弱さを出すのは最低ランクの禁忌で、それをさせているのはモラルの無い奴らのせいで。

「でも、男子がみんな下心有りみたいに思われるのは心外だなぁ」

気がつけばそう口に出していた。

……いやまぁ下心はあってもずっとじゃないし、何も考えてない時だってあるしなんていうか、

と頭で言い訳を巡らせているといきなり背中をおもくそぶっ叩かれる。

「いだッ!!」

「分かってるわよ!咲眞はちゃんとしてるし、拜早はカッコイイし(はぁと)、秋吉さんは優しいし弾くんはたまに変態であの金髪はムカつくけど!!」

「色々混じってるよ茉梨亜」

と、前方を進む折笠がクスリと笑った。


「……仲が良いんですね」


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