―ユージェニクス―
―14―
壱村香と別れ、三人は拜早が居ると思われる地下への道を目指す。
一階が入口らしいという話を香に提示すると
「東側に上の関係者しか行けない廊下があるけどそこかもね。私は行った事ないから、奥の事は知らないけど」
と返答された。
人目を避けながら階段を使い一番下まで降りていく。
茉梨亜も咲眞も白衣を羽織っているとはいえ、流石に一度管原やサングラスの男に捕まった手前周りを警戒していた。
と……
「……やっぱり変だよね?」
途中、茉梨亜が不意に口を開く。
「この研究所おかしいよね、色んな事がずれてない?」
「……うん」
咲眞も肯定した。
研究所の行っている事と、こちらの認識のズレ。
「でも大体分かってきたよ?ここがやってる事」
咲眞の目は、軽い口調に反して厳しかった。
「整理、しますか?」
「そうだね……研究所の事暴けば、拜早を連れ戻せる理由になるかもしれない」
正当な理由に。
まあ既に人様の個人情報を使って不法侵入しているので、正当もくそもないのだが。
「拜早だけじゃないのよね。シア…も、他のナンバーの人だって、何されてるか分からないんだよね」
茉梨亜の言葉に、折笠は微かに目を細めた。
咲眞が進める。
「えっと、ここはSTIを研究する所でしょ。対象は発症原因と解決策が分からなかった星間症」
「それは医学界の公式でも発表されてますね。そして星間症は未だ研究段階のはず」
「うん、あたし達で新入社員の村崎律子のデータ見た時、この研究所の採用要項?っていうのもチェックしたけど」
「星間症と、婦人病対象みたいな事しか書いてなかったね」
研究所に侵入してもおかしくない個人情報を咲眞の元で調べた時、きちんと研究所の事も勉強した。STIの事も分かったし、管原達がどういう医師なのかも理解したつもりだ(茉梨亜は頭がこんがらがっていたが)。
「ていうか咲眞の情報網怖いのよね。弾くんの個人データとかバッチリだったもん……どっかハッキングとかしてるんじゃ」
「ん?何?」
にっこり笑われたので茉梨亜は慌てて首を横に振る。
「……でも、実際星間症の研究はほぼ終わってる」
そう言った咲眞に折笠が頷いた。