―ユージェニクス―
つまり、黒川邸を含み研究所を経由して外へ出るまで、頭が朦朧としていた……という事になる。

「黒川と研究所の共通点ってそれかなって思って……だからそういうのを引き起こす薬みたいなのを受け渡してた、とか」

思い返せば、あの時は自分では冷静のつもりで、けれど色々な事情に対し深く考えない様にしていた。

それは現実から目を反らしていたからだ、と思っていたけれど……

今こうして研究所に侵入出来ている身で考えれば明らかに

“あの時”の行動力の無さは自分や拜早にしては妙だ。

その反動が白の怪物として無心に行動出来たり、“茉梨亜”になりきれた精神の一部だとしたら。


「薬……」
茉梨亜の目が微かに泳いだ。


「……それは、上手く頭が働いていなかった、という事ですか」

折笠が不意に口を開いたので頷く。

「うん。……どうでもよくなって投げやりになってる感じ」

「……それは、貴方達が置かれた状況がそうさせた気がします。普通の人が呆気る状態になると、ストレスが緩和されたり、強いものだと、快楽を感じたり」

「か、快楽って……」
茉梨亜と咲眞は目を合わせた。
そして茉梨亜が弾ける様に折笠を見上げる。

「ちょ、ちょっと待って!どうでも良くなっちゃったり、カイラク…って気持ち良くなるって事でしょ?なんか、それって……」


「麻薬……」

折笠は二人を見下ろして呟いた。



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