―ユージェニクス―

「弾くん、もう一人の茉梨亜の事教えて！」

思わず勢いで茉梨亜は立ち上がり管原に問い掛ける。
管原は驚きの表情が強かった。

「おいおい、何でもう一人茉梨亜がいるだなんて思ったんだよ」
「だって、弾くんがあたしの名前知ってたのも、白の怪物が初めて会ったあたしを殺そうとしたのもそれで説明がつくの！それにスラムの知り合いの人に、その“茉梨亜”に男の子の友達が二人いるのも聞いたわ！」

そう茉梨亜が早口で言い終えると、驚愕していた管原の顔が冷静になった様に落ち着きを取り戻した。

真剣な茉梨亜を見据え、管原は薄く口を開く。

「確かに…茉梨亜はおまえ以外に存在する」


茉梨亜は目を見開いた。


「……やっぱり」

だが動揺を隠せなかった。

茉梨亜が、自分とそっくりな人間がもう一人のいるのだから。

もし会ってしまえば……どうなる？


別になんの問題もないかもしれない。

相手は他人の空似、たまたま名前も同じ……



「ど……どういう人なの？」

「…１５歳、黄土色の髪を二つ括りにして、得意武器は銃だ」




管原の言った説明――

それは自分自身そのものだった。



「―――」

「どうした？茉梨亜」




管原が、どこか含み笑いで訊ねてくる。

茉梨亜は……

目線が下に泳ぎながらも無心で、他に何も考えられずに次の言葉を吐いていた。




「……その人は……どこにいるの？」



探してはいけないと、頭で警告音が鳴っていた。

何故かそう精神で感じていた。

“茉梨亜”を、探してはいけない。



だが意思が、本心が、求めていた。


――真実を求めていた。