―ユージェニクス―










――俺は何をしてるんだろう。









――これで何かを得ているつもりはない。












――もう、俺は操られてるんだと、思うしかない。













――実際そうだ、記憶も意識もあやふやで、自分が生活しているのかも、人としての欲求も、分からなくなってしまった。








――ただ、時々……





ほんの時々我に返って思い出すのは







「また……あの夢」




友達の夢、大切だった子の夢。


みんなが、引き裂かれた時の事……




白い少年は廃屋の中で目を覚ます。


穴の開いた天井からは自分と同じ色……酷い曇り空だ。




「……茉梨亜」



呟いた。



夕立の時に出会った懐かしい存在。

あの土砂降りの雨でも、それは自分の仲間だって、思い出した。





「茉梨、亜……」


また呟く。



そして涙が出た。














「また俺は……殺そうとするのかな」


茉梨亜の存在を…もう、






「認めたくない……」











友達だから


大切な仲間だったから













茉梨亜には汚れて欲しくない。



汚れた茉梨亜は存在して欲しくない。








あんな奴に









「あんな奴に……っ」




茉梨亜を汚れさせてしまった。














「………………」



涙が止まらなかった。


止めようとも思わなかった。


ただただ思い出して、悲しくて



「…………っ」



泣いていた。















――――カタン




廃屋の扉から、物音。



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