―ユージェニクス―
「…は?」

拜早は思わずきょとんとしてしまう。

「ほら来いよっ」
肩を掴まれたまま引っ張られ、足元が覚束ない状態で拜早は男達の前に突き出された。

「ちょっ…何だよ」

顔を上げると十人前後の数の彼らが自分を囲んでいる。

奥に居た、いかにもリーダー格の男が座っていた腰を上げた。

「俺達の仲間もなァ…一人白の怪物にやられてんだよ」
そう言った男の目は、白の怪物への敵討ち等な様子は無く、理由を付けて相手をいたぶろうかという色をしていた。

(ん…?おいこれって、俺もしかしてカモられそうになってんの?)
客観的に半笑いで自分の現状を把握する。

(実際俺白の怪物だもんなー思いっきり鵜呑みにした…)
相手の言い分に理不尽さを見出だして、やっと口を開いた。

「白の怪物は外界に送還されたって掲示板で見たけど…?」
「逃げたんだろ?また」

にやりと笑いながら言われる。

周りの男達も、どこかしら笑みを浮かべていた。

(…この人ら、ほんとにやる気か?)

妙な雰囲気に拜早は少し逃げ腰になる。素直に鬱憤を晴らされる対象になどなるつもりは更々無いが、ここは所謂多勢に無勢、だ。

「……」

「……」

と、思ったところで大して饒舌ではない拜早は文句も抵抗もせずに黙っていると、リーダーらしき男は怪訝そうな顔を示す。

命乞いの様な事でもすると思っていたのだろうか。
拜早は相変わらずなんの表情も浮かべていない。


「……くそ、変な奴だなおまえ」
リーダーの男がそういうと、拜早のすぐ横に居た男が拜早の白髪を掴み別の男が拜早の片手首を握って床へと押し倒した。
「ッ!」
「ォマェさぁ…なんでマジ白髪なわけ?それに超顔色悪ィじゃん、不健康で白髪になるわけ?」
リーダーの男は倒された拜早を冷たく見下ろす。いつから持っていたのか、肩には長い鉄パイプを掲げていた。

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