―ユージェニクス―
「意見って…ッ」

「爆弾を仕掛けたんだ、これで全てを無くせるよ…瓦礫だけになる」

「咲眞…分かってるのか?!黒川んとこには」
「君にどうこう言われたくないね!」

睨み付けるような形相だった。
そんな咲眞を前に拜早は嫌な汗が吹き出してくる。


「あのな…黒川邸が爆発したらどうなるか分かってるよな?」
「だから爆破するんだよ…拜早、相変わらず頭が悪いね」
「ッ」

…違う、咲眞はこんな理不尽な奴じゃない。
気が振れているのか、見境がない――
こんな奴じゃないはずなんだ。


「…咲眞、タイマーを止めろ」
「どうして」
「あそこには茉梨亜がいるんだぞ!!!!」




反響した声の後の沈黙。

ハードディスクが読まれている機械音と、ファンの回る音だけが妙に響いている。



「……拜早、君は今まで何をしてた?研究所の犬になって、それでも茉梨亜を無かった人の様に存在を消そうとしていた」

咲眞の言葉に拜早の表情は悲壮に滲みだす。

「僕はねぇ、今となったらそれに賛成なんだ。この一週間ゆっくり考えたよ…今までの僕が馬鹿だった、無茶な事をやっていたとね……拜早」


微笑んで、拜早に視線を合わせる。


「君のやろうとしていた事に習うよ…茉梨亜を消そう?」


ガシャン と巨大な音が鳴った。
自分の横で壊された一つのパソコンの本体を、咲眞は無表情で見送る。

拜早は自分で頭に血が上っていくのが分かった。
「咲眞…てめぇ…」

「タイマーは起動した。もう爆弾の本体操作でしか爆破を止める術はないよ…爆弾は勿論黒川邸の敷地内、だ」

怒りを隠さず目前の咲眞を見下ろす拜早だが、そんな白髪の友人をも畏怖せず咲眞は立ち上がるどころか微動だにしない。

更には絶望的な説明を言ってのけたのだ…


「止まらない……だと………?」

「そう、“止まらない”」


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