―ユージェニクス―
出来ない。


同意など出来ない。


見過ごす事だってしてはいけない。


「……なんで、こんな…」

咲眞は黙っている。


「ッ」
「どこへ行く気?」
踵を返し走り出した拜早の後ろから、冷たい咲眞の声色が投げられる。
勢いよく振り返った。

「黒川の屋敷だよ!!」
「行ってどうするの?」
間髪入れず問い掛けられる。
「決まってんだろ爆弾を止める!!」
「黒川邸に入る気?無茶だよ、どうせ見つかって捕まる」
「見つからなければいいだろ?!」
「あの警備網に見つからない方がおかしいよ、百歩譲って見つからなくても拜早は爆弾の解除方法を知らない。僕もそんなの作ってない。実際爆弾を解体するしかないけど、拜早仕組み分かるの?解体する道具は?」


雨の様に浴びせられた言葉達に、拜早はしばし絶句する。

そして……成す術が無謀だという事を小さく飲み込み理解した。

しかし…理解したところで…

「……諦めろ、と…?」




友達が、友達の手に掛かるのを…黙って待っていろと……?




「今この瞬間」



言葉にしたのは咲眞だった。



「茉梨亜が黒川に玩ばれているのかと思うと死にたくなる」



その瞳には明らかに怒りが現れていた。

心なしかわなわなと肩が震えている。



「だから助けるんだよ黒川の手から!!僕達はもう汚れた茉梨亜を感じなくていいし、茉梨亜もあの悪夢から解放されるんだ!!!」

「……咲眞」

激昂した咲眞を、冷静に見つめた自分が居た。


「…ねぇ拜早…分かるよね?僕らは友達だよ?ねぇ…」

「あぁ…友達だ」


狂いを帯びた瞳の咲眞へ再び近づきながら、拜早は低く答える。


「友達だから……大切だから……キレイな理由はいくらでも言える………だけどなぁ、絶対やったらいけない事ってあるだろ!!?」

直後、咲眞は吹っ飛んでいた。








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