―ユージェニクス―

―7―

城で生活し始めて…結構経ってたと思う。


たまたまその日のその時間、城の外に居たんだ。


…あの時外にさえ出ていなければ……



「ぉやぉや可愛らしいお嬢さん達ですねぇ」



あいつらに遭う事もなかった。




凄く、青空だったのを覚えてる。


「ちょっやだ離してっ!!」

茉梨亜の手を掴んで、そいつは俺達にも指をさした。

「君も、そして君も、全員来てもらうよ…」

「…!」
「おまえら、まさか……ッ」

黒眼鏡をかけた男が二人と、嫌な笑いをする小男が一人。
三人は黒いスーツを着ていて…


「今日はいい身体を沢山手に入れられたね、たまにはこういう下町へ来るのもありかな」

小男がさぞいい仕事をしたみたいにそう言った。

こいつらが黒川の手下だと理解した時にはもう手遅れで……

「さっ君達はこれから旦那様に沢山可愛がって貰うんだからね。光栄な事だよ」


油断した子供が黒川のスーツの精鋭に逆らえるはずもなくて、そのまま連れて行かれたんだ……








「黒川も偉くなったものだな」



日が傾きを表にした窓の外を一瞥し、管原は若干皮肉的に口の端を上げながら言った。

咲眞が返す。
「そりゃそうだよ…スラムでスーツが着られる一般人は黒川の奴らだけだから有名だしね。今までも連れて行かれた人がいるのは僕達…スラムの中でも持ち切りの噂だから」

淡々とした口調だったが、裏には嫌悪の様なものを感じる。



「そうか…他と同じ様に、いやおまえらは特に運悪く…か」



拜早達の城があった場所周辺は殆ど廃屋、あの男が洒落た言い回しをした“下町”だ。

“たまにはこういう下町”と言っていた事から、普段そんな場所で人掠いなどしていないのだろう。
スラムには歓楽街的な所だって多々あるのだから、そこでいくらでも勧誘したり勝手に連れて帰ったり出来るはずだ。

現に黒川邸には沢山の“人”が居た。

彼らが多種多様な場所から有無言わさず拘束され連れて来られたのは明らかだった。


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