―ユージェニクス―
「黒川は茉梨亜を侵した。僕らの目の前で」
ずるり と音がした。
白い仕切りの向こうで、拜早が仕切りを背に足の力が抜けた様に座り込んでいた。
「目を反らす事を許されなかった。僕と拜早は踏み付けられ頭を握られ」
咲眞の、小さく奮える拳が痛む。
「茉梨亜が黒川のものになっていくのをずっと…ずっと見せられていた」
「―――それは」
―酷い、
そう管原は言いかけたが、その言葉は彼らには何の意味もないと、口を閉じた。
「黒川はね…それ自体乱暴じゃないんだ」
続けた咲眞のそれに、管原は怪訝そうな疑問符を浮かべる。
「丁寧に上手く、扱う。本当に。だからね……」
――茉梨亜、が。
「茉梨亜がどんな気持ちだったか、僕らは分かってしまったんだ」