テディベアは裏切らない
…‥…‥…‥…‥…‥

私は人を殺した。

私は人を壊した。

私は、取り返しのつかないことを、した。

ある人が、「それはお前のせいじゃない」と言ったの。

ある人は、「君は気にしなくていい」と言ったの。

だけれど、私のせいじゃないなら、どうしてあの人は死んだのか。

私が気にしなければ、いったいだれが、あの人をこの世界に留めるのか。

私は人を殺した。

私は人を壊した。

そのことに、なんの言い訳もしない。

だって、まぎれもない事実なんだから。

だから私は、救いなんて求めない。

求められない。求めるべきじゃない。

私が救いを求めることは、死んだ〝彼女〟への不義理だし、裏切り。

私は病んでもなければ、傷ついてもいない。
……ああ、ちょっと嘘。傷ならついてる。

けれどこの傷は、縫合することも癒すことも許されない。

私の胸をばっくり抉った傷がこのまま化膿していくのを、受け入れるしかない。

この私が、〝彼女〟と同じどこかへ旅立つ、その日まで。
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