涙のアト
 
 
 
「さっ!今日の目的は達成した事だしっ!
 
帰ろっか?」
 
 
 
疑問ばかりが浮かぶ私とは逆に、予定通りに事が進んだらしい一輝は、スッキリした様子でベンチから立ち上がる。
 
 
 
「あ!今日はそんなに暗くないし、一人で帰れるよ?」
 
 
「何言ってんの、充分暗いじゃん
 
さっ、帰るよ?」
 
 
 
私に手を差し延べてくる一輝。
 
 
 
………。
 
 
私にどうしろと?
 
 
いやー、分かってるけどさー;
 
 
 
そうしろと??
 
 
 
「?
ほら、早く帰ろ?
それとも、まだオレと居たい?」
 
 
 
「ちがっ、そーじゃなくて!
 
…そのー、…ソレは?」
 
 
 
私が静かに自分の指を、一輝の手へと差し向ける。
 
 
 
「え?コレ?オレの手がどうかした?」
 
 
 
どうかしてるでしょ!?
 
 
それとも私が気にし過ぎなの?
 
 
 
「だから…あの……その…」
 
 
 
「つべこべ言わないで、さっ!帰ろ」
 
 
 
「わっ!
 
ちょ、ちょっと!」
 
 
 
.
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