恋し金魚
「だって…驚くよ。」


「もしかして…気づいてなかったの?」







彼女と初めて会ったとき。



すごく懐かしく思えた。



まるでいつも一緒だったかのように。





あのとき雨の中をめずらしい真っ赤なワンピースを着て立っていた。



まるで金魚のようだった。










―金魚?





…まさか…


だって ありえない。




彼女の名前は『はなび』


僕の金魚の名前は『花火』




花火がいなくなったのは彼女に出会った日―?









「幸?どしたの?」





「ごめん…先帰ってる。」



僕は足を速めてアパートに向かった。






ありえない。





でも彼女は…まるで…



アパートにつくと部屋の戸をノックした。




「はなびちゃん。いる?」



でも返事は返ってこない。




扉を開けると中は真っ暗だった。




「はなびちゃん…?」



居間に行くと浴衣と手紙が置いてあった。




そこには



『みなさんへ』



そう書いてあった。




中を読み終えると僕は外へ飛び出した。







『みなさんへ』



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