恋し金魚
第六章 紫陽花
―花火―



「お前、誰?」




びっくりした…


だって急に…




男の子は10歳くらいで私を見下ろしている。




「あ…あなたこそ…誰?」




今は朝。


街は相変わらず静かだった。



こんな時間に…どうしてここに?




すると




「グゥ~……」





ん?



今の お腹の音?




「べっ別に!お腹すいてるわけじゃねーぞ!」



男の子は顔を真っ赤にしている。



「…どうしよ。私お金持ってないし…あれ?」



手がポケットに触れると何かにあたった。




「ようかんだ…」



この前おばさんにもらったミニようかん…



「食べる?」




こくん と男の子は頷いた。







「名前、なんていうの?」



「たくみ…」


「私は花火!」



少し沈黙が続いた。





「たくみくんは…どうしてここに?」




「………」



「あ…言いたくなければ言わなくていいよ?」







「……家出。」




「家出?」



「…母さんが、タロウにばっかり優しくするから…」



「タロウって?」



「僕の弟。今1才なんだ。
< 14 / 25 >

この作品をシェア

pagetop