恋し金魚
「はなびちゃぁん!朝よー!」


「う~~…。」



おばさんがカーテンを開くと窓から光がこぼれた。


私はむくむくと布団から顔を出した。



「おはようございます…。」


「おはよう♪ さっ 顔洗ってらっしゃい。」


「はぃ。」



私は洗面所に向かうと歯磨きを手に取った。

苦い歯磨き粉に顔を歪めさせながら昨日の夜のことを思い出す。



シャコ シャコ…




「思い出?」


「… 僕、両親いないんだ。小さいときに事故に合って。」


…え…



「親父がさ、久しぶりに休みとってくれて…みんなでディズニーランド行ったんだ。でも……その帰りに…」



幸くんのお父さんはアパレル会社の営業マン。なかなか休みが取れないお父さんは幸くんのためにディズニーランドに遊びに連れていってくれた。
帰りに高速道路を走っていると前方からトラックが突っ込んできた。 幸くんの家族の車はそれに巻き込まれた。幸い、幸くんは後ろに乗っていたため背中に火傷と全身打撲ですんだが、幸くんのお父さんとお母さんはその日のうちに死亡が確認された……


「そのあとはじいちゃんに引き取られたんだけど中2んときに死んじゃってさ。でも大家のおばちゃんが面倒みてくれて すごい感謝してる。」



「……さびしくないの?」
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