空の姫と海の王子


──今日も寒いですね


都心から少し離れた小さな街

有名な店がある訳でもなく
巨大なモールがある訳でもない

これといって、特徴のない
比較的静かな街だった

そんな街の中を歩く一人の男


風も冷たく、吐く息は白い
いつもよりも寒いかもしれない

早く暖かい所に行きたくて
男は歩く速度を少し早めた


サラサラの黒い髪に縁なしの眼鏡
母親譲りの端正な顔立ちは上品で
すれ違う人々の中には
思わず振り返る人もいた

そんな事にも慣れているのか
男は対して気にもせずに
路地裏へと足を進めた


上品で紳士的な男には
路地裏はあまりにも不自然だ

男はどんどん進んでいくと
存在感がまるでない扉の前で止まった


扉の上には看板なのか
小さな板に文字が書いてあった


¨free style¨


男は口元に笑みを浮かべると
扉を開き、中に入っていった


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