空の姫と海の王子
「久しぶり、優」
「由紀……今までどこに行っていたんですか」
冷静な優の口調だが
静かな怒りが込められている
優と少女──橋本由紀は
いわゆる彼氏彼女の関係
自他共に認める恋愛下手な二人は
たまに連絡を取り合う程度で
今日会ったのも2ヶ月ぶりだ
しかし、ここ1ヶ月間
由紀からの連絡は途絶えていた
優は常に由紀を心配していたのだ
その思いを分かっていてか
由紀はごめん、と目を伏せた
「確かめたい事が合ったの。それにちょっと時間がかかっただけ」
「……それなら連絡くらい入れて下さい」
「ごめん。でも今は携帯も¨SUN¨の監視下に置かれてると思うから、むやみに連絡はとらない方がいいと思って」
そのくらい、優も分かっている
由紀の言い分が正論だという事も
……駄目ですね
由紀の事となると周りが見えなくなる
冷静になろうと思ってもなれなくなる
優が深い溜め息をつくと
マスターがクスクスと笑った
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