空の姫と海の王子
「お二人共、若いですね。さあ、由紀さんもこちらへどうぞ。そして……」
マスターは由紀の後ろに視線を向けた
「お嬢さんも、どうぞ」
「………」
マスターが声をかけると
由紀の後ろに立っていた女が
一歩前に出て由紀の隣に並んだ
優は女に微笑みながら
信用できる人間かを観察した
しかし、由紀の連れてきた人間だ
彼女がここに連れてくる程に
この女を信用しているのなら
自分が観察する必要は殆ど無い
優も、由紀も、¨能力者¨だから
そして多分、この女も
胸の辺りまである黒髪に
端正な顔立ちをしている
まさに絶世の美女
その言葉が相応しいだろう
女は優とマスターを見つめると
一瞬悲しそうな顔をした気がした
しかし、本当に一瞬で
多分気のせいだろう、と優は思った
「二日前に店の近くで倒れてたの。……この子も、能力者だよ」
由紀は両親を亡くしている為
今はこの店に住み込んでいる
ということはマスターも
知っていたと言うことだ
「……柊奈々です。よろしく」
女──奈々はそう言って微笑んだ
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