空の姫と海の王子


「お二人共、若いですね。さあ、由紀さんもこちらへどうぞ。そして……」


マスターは由紀の後ろに視線を向けた


「お嬢さんも、どうぞ」

「………」


マスターが声をかけると
由紀の後ろに立っていた女が
一歩前に出て由紀の隣に並んだ

優は女に微笑みながら
信用できる人間かを観察した

しかし、由紀の連れてきた人間だ

彼女がここに連れてくる程に
この女を信用しているのなら
自分が観察する必要は殆ど無い

優も、由紀も、¨能力者¨だから


そして多分、この女も


胸の辺りまである黒髪に
端正な顔立ちをしている

まさに絶世の美女
その言葉が相応しいだろう


女は優とマスターを見つめると
一瞬悲しそうな顔をした気がした

しかし、本当に一瞬で
多分気のせいだろう、と優は思った


「二日前に店の近くで倒れてたの。……この子も、能力者だよ」


由紀は両親を亡くしている為
今はこの店に住み込んでいる

ということはマスターも
知っていたと言うことだ


「……柊奈々です。よろしく」


女──奈々はそう言って微笑んだ


_
< 111 / 339 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop