空の姫と海の王子
恐ろしい記憶にも、取締り法にもゾッとし
サッと血の気が引いた玲と蘭は
再び床に横たわる陸を見て
すぐさまパチンと指を鳴らした
すると、部屋の扉が開き
スーツ姿の男達が部屋の中に
ぞろぞろと入ってくると
玲と蘭は陸を指差した
「思い出した、そいつ友達」
「つまり客人、丁重にもてなせ」
棒読みで指示を出した二人は
真っ青の顔のまま部屋を出ていった
が、すぐに戻ってきて
スーツ姿の男達に向かって叫ぶ
「「奈央には絶対秘密だからね!!!」」
その必死な姿にスーツ姿の男達は
些細な疑問を感じたが
口答えすると恐ろしいので
黙って頷き、陸を部屋から運び出した
ふう、と息を吐いた二人の前に影ができる
いちいち見上げなくても
それが誰なのかは二人には分かっていた
そう、分かっていた
だから逃げた、全力で
一直線の廊下を駆け抜けながら
二人は追い掛けてくる人物に向かって
思い切り大声で叫んだ
「「来るなああ!!クソじじい!!」」
「坊っちゃん!お嬢様!あなた方は私が何も知らずにいるとお考えですか!!また悪さをしでかして!」
二人の後を追い掛けて
もの凄いスピードで走るのは
杖を持った小さな老婆
廊下を歩いていた屋敷のメイド達は
小さな笑い声をあげながら
廊下を走る三人に丁寧にお辞儀をした
こんな景色は西園寺の屋敷では
日常茶飯事なのだから
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