空の姫と海の王子
「──¨EARTH¨それが俺達の倒すべき相手なんだ」
「……戦いなんて、悲しみしか生まないよ」
灰色の空から落ちる白い雪は
目の前に広がる海に降り注ぎ
すぐに溶けて、消えた
切ない、と少女は思った
隣に立つ少年が目の前の光景を
どう思っているのか分からない
捨てられたゴミがなければ
曇った空と同じ灰色の砂浜も
綺麗に見えたのかもしれない
この光景が綺麗だったら
少年も笑うのだろうか
「もう僕には失うものはないから、だから全力で戦える」
風が二人の間を通りすぎた
少年の真っ直ぐな瞳の奥に
強い意思が潜んでいるのを見て
少女は悲しげに目を伏せた
「わかった」
小さな唇から紡がれた言葉に
少年はにこりと微笑んだ
感情が込もっていない微笑みに背を向け
少女はだけど、と呟いた
「……春にも、条件があるから」
短く切られた茶色い髪が揺れて
振り返った少女の空色の瞳が
少年の黒い瞳を見つめた
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