空の姫と海の王子
◇海色ハーモニー
──振り上げた手を止めた
隣の部屋ではあいつが寝ている
そのままゆっくりと手を下げた
「くそ……っ」
そのまま床に座り込み
皺の寄った眉間に手を当て
海斗は深い溜め息をついた
照明の消えた暗い部屋には
床に敷かれた布団があるだけで
その布団も誰かが寝た形跡はない
モヤモヤとした頭の中
微かに過る記憶
聞こえない、声
「……何なんだよ」
何もない暗闇に取り残されたような
どうしようもない孤独感を感じ
海斗は小さく呟いた
消えた記憶
離れた心
見えない所で何かが
失われようとしていた
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