空の姫と海の王子


──白と緑で統一されたリビング

散らかるゴミと服と化粧品がなければ
清潔感のある部屋だったのだろう

独り暮らしにしては広すぎる
そんなマンションの一室で
布団の中で丸まっていた女は
身体を起こして背伸びをした


「よっ、と」


ベッドから降りて顔を洗って
一杯の水を飲んで眠気を覚ます

ピンクベージュに染められた髪は
ちょうど肩に付くぐらいの長さで

ガシガシと頭を掻きさえしなければ
少し幼いけど整った顔立ちも含めて
見た目はとても可愛いらしいのだが


「………」


女は空になったコップを置くと
リビングの隣のドアに近寄り、開けた

リビングと同じ白と緑で統一された部屋

床に敷かれた布団の中で
男が静かな寝息をたてていた


_
< 129 / 339 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop