空の姫と海の王子
暫くの沈黙
そして
「ふべしっ!?」
奈々の拳が陸の腹部にめり込み
そのまま壁まで吹き飛んだ
玲と蘭は顔を青くし
優は呆然として新聞を落とし
マスターはカップを磨く手を止め
由紀は必死に笑いを堪えた
「つまらない冗談は嫌いよ」
奈々が無表情でそう言うと
陸は起き上がって奈々を睨んだ
「てめえ……いきなり何すんだよ!!」
「てめえ?もういい加減にして頂戴。つまらないわ」
「わけわかんねえ……何言ってんだこいつ」
頭おかしいんじゃねえの?
陸は立ち上がると
奈々の横を通り過ぎる
玲と蘭はハッとして
由紀達に陸を紹介した
「えっと、こいつは新堂陸っ」
「あたし達の庭で勝手に寝てるところを見付けたんだっ」
「………火の能力者ですか」
優が陸の紅い瞳を見つめると
眼鏡を直して由紀と頷き合う
陸も奈々と同じ
色はあるのに能力がない能力者だ
きっと学園にも入らずに
普通に暮らしてきたのだろう
奈々と、同じように
優は二人の関係に疑問を感じたが
今は黙っておこうと思った
由紀がそれを制したから
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