空の姫と海の王子
「初対面の人間に対していきなり殴る凶暴女なんて守る必要ねえだろうが!!」
「黙りなさい。潰されたいの?」
「ごめんなさい嘘ですすいませんでし………」
一瞬で土下座の体制に入った陸だが
ふと疑問を感じて視線を上げた
呆然と陸を見る奈々と目が合い
ハッとして立ち上がり指を差した
「お前……本当は能力あるんだろ!!」
ドーンと効果音が付くくらいの勢い
玲と蘭はおおっ!と感激し
由紀と優は呆れて溜め息をつき
マスターは微笑んだまま
奈々は即答した
「本当に馬鹿ね。ある訳ないでしょう」
「そんな訳あるか!!じゃあ何で俺は土下座したんだよ!お前が何かしたんだろ!!」
陸が変な理由で怒鳴ると
奈々は馬鹿にした様にフッと微笑んだ
「陸が勝手にしたんじゃない。土・下・座」
「……お前なあ、ふっざけんなああ!!」
「ふざけてなんかないわ」
真剣な瞳
その奥に宿る意思の強さに
陸は思わず言葉を呑み込んだ
「私はここに来てからずっと本気なの。ふざけた事なんて一度もしていないし、する気もないわ」
吐き捨てる様に言って
陸に背を向けて階段を上る
そのまま振り返らずに
奈々は由紀に言った
「ごめんなさい。部屋で一人にさせてちょうだい」
由紀が頷いて暫くしてから
扉が閉じる音が小さな店に響いた
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