空の姫と海の王子


なんだ、アイツ

いきなり殴ってきたと思ったら
次はいきなり怒ってきて

だけどさっきは
寂しそうだった気がする


……よくわかんねーけど


苛立ちを隠し切れずに
髪をグシャリと掻き乱す

その苛立ちはどこからくるのか

記憶失い、焦っている自分

それなのに、何も出来ない自分


奈々の後ろ姿が
瞳の奥に感じた悲しさが
陸の頭を過る


「あー!もう意味わかんねえ!!」

「ちょ、陸ー!」

「どこいくのー!?」

「うっせえ!教えねえよ!苛々するから外で散歩してくんだよ!」


教えねえよ!とか言いながら
律儀に教えた陸は店を出ていく

カラン、カランと鳴ったベルが
やけに寂しく聞こえたのは
気のせいだったのだろうか


「……一人にして大丈夫ですかね?」

「大丈夫だよ、きっと」


由紀はそう答えて目を瞑る


瞳の色さえ変えれば
能力者だとはバレない筈

陸は馬鹿だけどそこまでは
馬鹿じゃないだろうから


全てを見通す千里眼で視えたのは


「…………」


由紀は深い溜め息をついた

三人は陸がリバースしてない事を悟って
同じように深い溜め息をついた


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