空の姫と海の王子


ひらり、ひらりと
空から落ちてくる桜の花びら

手のひらに落ちたそれをジッと見つめ
春がいた屋上をゆっくりと見上げる


不思議な女だった


一目見た途端に浮かんだ感情は¨安心¨
何故かは、分からねえけど

そして女が消えた瞬間に浮かんだ感情は

¨不安¨

何故かは……分からねえけど


陸は桜の花びらを無造作に
ズボンのポケットに突っ込んだ

嫌な予感が止まらなくて
早く伝えねえとと思った


「………誰に?」

「……!?っ誰だ!」


声のした方に振り返ったら
知らない男が立っていた

黒い髪に、黒い瞳をもつ男は
楽しそうに微笑んでいる


……笑ってる
なのにあの雰囲気は何だ?


男の周りの空気だけが
特別に澄んでいる様に感じる

透明で、全て汚れを浄化する様な
怖いくらいに澄んだ空気

陸は息を呑んだ
こいつはヤバいと本能が伝える


「なあ、誰に伝えるんだ?」


お前は一人なのに

お前に友達なんていないのに


そう言われてる気がして
耳を塞ぎたくなった


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