空の姫と海の王子
気付いた時には
何も覚えてなかった
俺は新堂陸で
家族はいなくて
友達もいなくて
帰る家も無ければ
頼る人もいなかった
玲と蘭に捕まって
Free Styleに連れてこられて
俺は一人じゃないと
そう、思いたかった
「何の能力も無いお前を必要とする奴がいると思うか?」
「うるせえ!!お前には関係無いだろ!」
「関係無い?いいや、関係有るね。だって俺は……」
男はニヤリと口角を上げた
が、一瞬で無表情に戻った
陸は口を開けたまま
男の前に現れた女を見た
「あなたと陸は何の関係も無いわ。消えて」
「お前……!」
「……へえ、君も」
男が言い終える前に
女が男の腹に蹴りを入れると
長い黒い髪が風に靡いた
アメジストの様な紫の瞳は
男を鋭く睨み付けていた
後ろに跳んでかわした男に
奈々は一瞬で間合いを0にして
何発も強く速い蹴りを入れる
男はひらりと避けながらも
楽しそうにまた口角を上げる
「流石だね。ただ……所詮、能力が無い人間に過ぎないよ」
足を掴まれて奈々は表情を歪める
予感はしていた
こいつも能力者なんだと
奈々は男を睨み付けた
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