空の姫と海の王子


片足で地面を強く蹴って
掴まれた足を軸にして
男の顎を蹴り上げた


「能力が無いから、何?」


そのままふわりと一回転した奈々は
勝ち誇った様に微笑んだ

しかし、その笑みを浮かべたのは

奈々だけでは無かった


「《さあさ、踊りなさい。私の可愛いお人形よ》」

「っ!?」


高らかな声が響いた途端
奈々の体は石の様に重くなった


重力の能力者?

違う、重さは変わらない
体が動かないだけ

それも違う

体が動かせなくなった……?


混乱する奈々の耳に
また高らかな声が響く


「《さあさ、踊りなさい。あなたは奴隷の様に這いつくばって、目の前の偉大な王に敬意を表せ》」


奈々は膝を地面に付けて倒れ込むが
腕だけは絶対に曲げようとはしなかった

アスファルトに削られた指先からは
痛々しい血が滲み出ていた

スッと空から降ってきた女は
軽々と地面に着地して
這いつくばる奈々を見て嘲笑う


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