空の姫と海の王子


グッと腕に力を入れて
動かない筈の体を無理に動かす

後少しで立ち上がれるのに
リベルの残酷な声が響いた


「動くな人形め《さあさ、踊りなさい。絶望の前にひれ伏せ!》」

「っう!!」


ふわりと浮いた奈々の体が
コンクリートの塀に叩き付けられる


「……え?」


しかし、来る筈の激痛は来ない

自分の体を包み込む暖かさが
人の温もりだと気付くのには時間がかかった


これは、陸……?


そう気付いた時には陸の腕が離れて
奈々は力無く地面に座り込んだ

すぐに振り返りたいのに
やはり体が言う事を聞かない


「い……ってえ……あのクソ女」

「……何やってるのよ馬鹿!」


奈々を庇って塀に叩き付けられた陸は
全身を強く打ち、後頭部からは血が出ていた

口の中に溜まった血を吐いて
奈々の頭をぐしゃりと撫でた


「怪我してねえよな、ちょっと待ってろ」


あいつ殺ってくるから

ふらつきながらリベルに向かう
陸の後ろ姿はボロボロで


……私は最低だわ

こんな状況なのに

嬉しくてしょうがない


奈々はグッと唇を噛み締めた


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