空の姫と海の王子


「何故春を知っているの」

「……君達と同じだよ。3日前、俺の前に春は突然現れた」


何も話さないと思ったが
意外にも話してくれるらしい

話さないなら無理にでも、と
考えていた奈々は拳を解いた

しかし、警戒は解かない
獲物を睨む様な冷たい目で葵を見る


「春の居場所を知っているなら教えなさい」

「それが人に物を頼む時の礼儀?」

「あなたに礼儀なんて勿体なくて使いたくないわ」

「あーあ、本当……春の言ってた事が分かる気がするな」


葵の言葉に含まれた意味に
奈々は眉をひそめた

クスクスは笑っていた葵は
突然真顔になって奈々に告げた


「先に言っておくけど、春は自ら望んでこっち側にいる。俺達が強制した訳じゃない………春は自分の意思で俺を選んだ」


春が必要としているのは

君達なんかじゃないんだよ


葵の言葉が頭の中を巡る
心が壊れそうだった


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