空の姫と海の王子
ふと、奈々は気付いた
陸と同じ様に春も記憶を失っていて
純粋な春は葵の言葉の疑う事なく
そのまま信じたのではないか、と
それなら春と直接会って
記憶を思い出させればいいわ
とにかく、早くみんなを探さないと
戦争を止めるどころの話じゃないわ
「春は私達の大事な仲間なの、必ず取り返してみせるわ」
「………ねえ、君さ」
葵は奈々の目の前まで来ると
可哀想だね、と笑った
この男は一体
普通の人間と同じ黒い瞳の奥に
何を隠しているのだろうか
奈々が目を離さないでいると
葵は奈々の頭を自分の胸に押し付けた
「っ!?やめっ」
「黙って聞きな」
そのまま抱き締められる様にして
そっと耳元に口が寄せられる
「春は彼と違って記憶を失ってないし、君と違って能力を失ってる訳じゃない」
嘘よ
記憶があるなら
あんたに協力する訳ない
能力があるなら
私達を探さない訳がない
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