空の姫と海の王子


──真っ暗だった

そこにいるのは私だけ

そう気付いた瞬間に
襲いかかってきた孤独感


嫌だ……誰か助けて!


声が出ない

助けを呼べない

それでも心の中で必死に叫ぶと
目の前に空色の光を纏った春が現れた

希望に満ちた瞳で春を見るが
空色の瞳からは憎悪が溢れている


「奈々はいらない」


春……?


「奈々なんて仲間じゃない」


何を言ってるの?


「能力を失った神なんて、いらない」


止めて、止めて、止めて

もう止めて!!!!


その言葉が放たれると
奈々の足下に大きな穴が開いた

堕ちていく奈々は必死に叫んだ
しかし、出ない声が春に届く筈がない


「いらない奈々なんて」


キエテシマエバイイ


どもまでも堕ちながら聞こえた声

奈々の瞳から紫色が消えていく


「──……奈々、よく頑張ったな」


陸……?


優しい声が光になって
奈々の体を包み込んだ


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