空の姫と海の王子


ベッド脇に置かれた椅子に座って
由紀は奈々の小さく震える手を握った


「大丈夫、私達はずっと一緒にいる」


これからも、そう


「今までと、同じ様に」


もう駄目かもしれないと何度も思った

日々激化するSUNとEARTHの戦いには
たくさんの人と街が巻き込まれた

廃墟となった街には
家を失った人が集まった

自暴自棄になった人間は
諦めてひっそりと生きるか
憎しみを力にして戦うか

¨反能力者¨を掲げるSUNは
そういう人達を引き入れていき
どんどん力を増していった


たくさんの声が消えていく感覚に
何度も吐きそうになって
初めて千里眼の能力を恨んだ

目を瞑って見えるのは
真っ暗な世界と泣き叫ぶ人々
戦いに歓喜する狂った能力者


「……来てくれて、ありがとう」


終わる世界に落ちてきた希望の光

諦めずに走り続ければ
奇跡は何度だって起きる

それを教えてくれた君達が来てくれたから


「一年前の奇跡みたいに……もう一度、私達の世界を救って」


由紀の瞳から溢れた雫は
頬を伝ってシーツに染みを作った


_
< 176 / 339 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop