空の姫と海の王子
◇溢れた愛の行方
──守りたい
心からそう思えて
気が付いたら体が動いてた
「へえ、その女がそんなに大事なんだ」
陸は奈々を抱き抱えながら
楽しそうに嘲笑う葵から逃げる
路地裏を必死に走りながら
何とか人通りが多い場所を探すが
迷路の様に抜け出す事ができない
陸と葵の間にある圧倒的な力の差
これが能力者と人間の差なのかと思うと
悔しくて無意識に唇を噛み締めてしまう
葵の能力が何かは分からないが
もし、使われたら陸も奈々も
怪我ではすまないのは確かだ
だから、逃げる
いつもなら無駄だと分かってても
真っ正面から相手とやり合った
それが俺のやり方だから
だけど、今は違う
俺はここで死ぬ訳にはいかない
「……っ……!」
腕の中でピクリと震えた奈々を
ぎゅっと強く抱き締めた
「大丈夫だ、俺が絶対に守る」
こいつを死なせたくない
こいつを失いたくない
理由なんて知らねえ
そんなのは後で考えればいい
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