空の姫と海の王子


「春は自分の事を俺には何も話そうとしないんだ。春の過去を教えてくれたら、そしたら君達を見逃してあげるよ」


……何言ってんだこいつ

春?

何それ、え、
Springの春の事?

……違う、
春はさっきの女だ

だけど何で今
そいつの話になるんだよ


「……つか、過去も何も俺は今日初めてあの女に会っ「俺は嘘は嫌いだ」


陸の言葉を遮った葵に
先程までの笑みは無かった

真剣な瞳で陸を見つめる

心の隅々まで見透かされている感覚に
陸の体がピクリと震えた


「春が俺の知らない誰かに会って話してるのを見たのは、お前が初めてだ。それに春は¨今までありがとう¨とお前に言った」

「それは」

「初めて会った奴に、¨今まで¨なんて言葉は使わない」


葵が陸に一歩近付いた


「教えろよ。春の過去を、春の大切なものを」


知らないものを教えられる訳がないが
今の葵にそれを訴えても無駄だろう


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