空の姫と海の王子
「何度も言うけどな、俺はあいつを知らないし、あいつの過去も知らない」
「はあ……交渉決裂だね、もうお前には聞かない」
深い溜め息をついた葵は陸を睨む
すると、陸は弾かれた様にして
奈々から手を離して倒れた
陸の腕から離れた奈々の体はふわりと浮いて
葵の腕の中へと移動した
「お前が口を割らないなら、この女から聞き出せばいいよね」
「やめろ!そいつを離せ!!」
「へえ、この女がそんなに大事なんだ」
「当たり前だろ!!そいつは………」
そこまで言って、止まる
そいつは俺の………?
心の奥底の暗い闇の中で
頑丈な鍵をかけられた扉が
ガタガタと音を立てる
閉じ込められた何かが
早く出してくれと叫んでる
……何だ、この感覚?
頑丈にかけられた空色の鍵が
光の粒になって消えていく
鍵が完全に消えた瞬間
弾ける様に開いた扉から
真っ白な光が溢れ出した
黙って俯いていた陸の雰囲気が変わり
葵は眉間にシワを寄せて陸を見た
バッと顔を上げた陸の赤い瞳には
さっきまで無かった強い光が宿っていた
「奈々は………俺の女だ!!」
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