空の姫と海の王子
あのじいさんには
俺が考えてる事が分かったのか?
それとも、俺が本当に
月が見たいと思ったのか?
よくわかんねえけど
取り合えず早く空を見たい
もやもやした気持ちが胸に渦巻く
そんな気持ちを抑えながら
階段を上がってすぐの部屋の扉を開けた
「………」
「………」
「………」
パタン
無表情のまま扉を閉めると
海斗は別の部屋を探そうと振り返った
しかし、背後の扉が勢いよく開き
先程まで部屋でいちゃついていた男女が
顔を真っ赤にしながら飛び出してきた
「ちょちょちょ!!!待てよおい!」
「な、なんで海斗!!あなた無事だったのね!?」
「………あ?」
うるせえ、騒がしい、喧しい、耳障り
海斗は黙って振り返り
男の目を睨み付けた
男はそれに怯むことなく
相変わらずの笑顔で海斗を見ている
……何だこいつ
こんな奴等はどうでもよくて
いいから早く空が見たい
海斗は二人の横を抜けて
ベランダのある部屋に入ると
そのままベランダに出て空を見上げた
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