空の姫と海の王子
ああ、笑ってるんだ
黒に染まった夜空の中で
キラキラと輝く星と月を見て
まず始めにそう思った
いや、違う
そう感じたんだ
楽しそうな笑顔で
誰かと笑ってる
俺のいないどこかで
俺の知らない誰かと
あの笑顔で、笑ってる
………誰が?
「おい海斗!!お前今まで何してたんだよ!心配してたんだぜ!?」
「何が心配してた、よ。今まで記憶無くして何もしてなかったじゃない」
「う……ま、まあそれは置いといて!取り合えず海斗も無事だったんだ!よかったよかった!!」
「全く………。でも、本当に無事でよかったわ。………海斗、聞いてる?」
奈々が海斗の肩に手を置くと
海斗は素早くその手を払って
奈々と陸を睨みつけた
奈々と陸の表情から笑みは消え
代わりに現れたのは困惑、疑問、そして
「………お前、記憶がないのか?」
陸の声には明らかな動揺が含まれていた
¨記憶がない¨
その言葉に反応した海斗は
ようやく口を開いた
「お前も¨俺¨を知ってるのか」
お前¨も¨
海斗の事を知っているのは
奈々と陸と、そして……春
奈々は確信した
海斗も春に会った事を
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