空の姫と海の王子

同時に床を蹴った

その踏み込みの弱さに
奈々は心の中で舌打ちしながら
海斗の腹部に肘撃ちする

それを読んでいたのか
海斗はそれを避けて
体勢の崩れた奈々の腹部に
膝蹴りを食らわせる、はずだった


「甘いわよ」

「ちッ!」


海斗の膝蹴りの力を使い
そのまま相手を床に叩き付け
仰向けに倒れた海斗の首筋に手刀を添えた

勝利にクスリと笑った奈々だが
その瞳は酷く冷めていた


「これが本当の戦いだったら、あなたは死んでた」

「………」

「ねぇ、現実から目を逸らすのはそんなに楽しいかしら?」


何もかも忘れて

自分は関係無いと言い

辛く、苦しい戦いから逃げて

それはそんなに楽しいの?


「どうなの………答えなさいよ!!」


黙り込む海斗にキレて
声を荒げたのは奈々だった

胸ぐらを掴んで海斗を起こすが
それでも視線を逸らす海斗に
思わず手を上げて、止まった


シャツから覗く左胸

そこに刻まれた紋章は
自分のものよりも
明らかに大きく、濃い


「………悪い」


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