空の姫と海の王子


「───っ………!」


胸を押さえて
乱れた呼吸を整えて
小さく息を吐いた

ボンヤリとした頭が動き出すと
春は立ち上がって周りを見渡した


「みんな………どこ?」


歩き出そうと足を動かすと
フラりと視界が揺れて
バランスを崩して倒れた


「痛っ………」


痛みで意識がハッキリする

コンクリートで覆われた地面
遠くに見える高い建物


そっか、着いたんだ

春は………人間界に


だけど、みんなは?


春はまた立ち上がって
塀に手を付きながら
フラフラと歩き出す


…………寒い


空を見上げると
暗い夜空に輝く星と月

それにそっと手を伸ばした


「ごめんね、ちょっとだけ光をちょうだい?」


そう言って笑う春の声に
星達は返事をしたみたいに瞬くと
春の体がほのかに光を帯びる


ほっとする暖かさに
重苦しい体が少しだけ軽くなった


「………よし、春さんふっかーつ!元気になったことだし、みんなを探しにいきますかっ!!」


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