空の姫と海の王子


悲鳴が出そうになった口を押さえて
そのまま崩れる様にその場に座り込んだ

体の震えは治まるどころか
激しくなる一方で

焦点の定まらない瞳からは
ボロボロと涙が溢れ出す


ぽつり、

水滴が春の髪を濡らすと
一気に空から雨粒が降り注ぐ

空が泣いていた

大声で泣き叫ぶように
激しい、大粒の雨が地面を濡らした


これが、今の人間界の現実

無意味な戦いの出した犠牲


世界の均衡と調和を

守れなかった、結果


「っ、ごめんなさい…っ、……ごめんなさい………」


こんな事が起きてるなんて知らず

自分は平和な日々に笑っていた


「ごめんなさい………っ!!」


嗚咽と共に溢れる懺悔の言葉

雨は止むこと無く
更に激しく降り続く


地面に付いた血を流す雨

二度と動かない体を清める雨


「…………」


空模様の傘が春に近付いていく

自分の周りだけ雨が止んだ事に気付き
春は涙で濡れた空色の瞳で見上げた


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