空の姫と海の王子
「うん、だって怪我してなかったんでしょ?みんなは強いから心配無用なんだあ〜」
「………甘いよ」
「へ?」
足元に転がる千切れた
ぬいぐるみを拾い上げて
もう二度と、動く事の無い
子供の横にそっと置いた
こんなに静まった町が
昔の様に賑やかになるのは
過去にでも戻らないと不可能で
もう、二度と
この町に笑い声は響かない
「EARTHが奪ったんだ。幸せも、命も、何もかも、全てを」
「………」
「そんなEARTHを俺は許さない。………だから、」
憎い、憎い、憎い
全てを奪う能力者が
能力者達、EARTHが
「《永久の闇に降り注ぐよ》」
澄んだ声
ゆっくりと振り替えると
夜空に向かって両手を伸ばす春がいた
空色の澄んだ瞳が更に輝き
柔らかな碧色の光が体を包みこむ
「《絶望なんか吹っ飛ばして、希望をあげるよ》」
「…………そう」
「《夢がいっぱい詰まった星屑からの贈り物》」
男はそっと視線を落とした
やっぱりこいつも能力者なんだと
この町を消し去るつもりなんだと
全てを失ったこの町に
失うものはもう無いけれど
だけど、その拳は硬く握られていた
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